アイゾールテクニカ

COLUMN

建物の漏水や結露を可視化する「高性能赤外線カメラ」

2008.07.01

漏水や結露などの問題箇所を可視化し、的確で迅速な調査ができる「高性能赤外線カメラ」による建物診断法をご紹介します。従来の赤外線カメラが対応できなかった箇所に精度の高い撮影が可能となり、漏水箇所を的確に特定します。

1.住宅のクレームのNo.1は「漏水事故」

現在、4,680万戸の住宅が存在している中で、築後10年以上経過した住宅は、3,940万戸と全体の85%を占めています。※1
その様な状況下で、住宅クレームは頻繁に発生しており、外壁・屋上の「漏水事故」が第1位となっています。※2
漏水の怖さは、単なる雨漏れだけの被害にとどまらず、建物自体の腐食を促し寿命を低下させてしまうことにあり、早めに的確なメンテナンスを行うことが、建物を丈夫で長持ちにする秘訣だといえます。

今、建築業界ではスクラップ&ビルドから、エコロジー&サスティナビリティ(持続可能)へと意識がシフトしてきています。

※1 H15.総務省統計局調査より
※2 社団法人 建築業協会「建築工事瑕疵・クレーム防止マニュアル」より

2.住んでるだけで病気になる?人体に与える健康被害の犯人は…?

全米一の病院規模を誇るメイヨ・クリニック(Mayo Clinic)は、住宅による健康被害を2006年のレポートで発表しています。

この健康被害を起こす犯人は、「漏水・内部結露」などの多量な水分により発生した「カビ」の細菌でした。壁の中に入っている断熱材や、通気性のない塩化ビニール壁紙の裏側に水分が溜まった結果、「カビ」が多量に発生し、ぜんそくや慢性蓄膿症などの喉や鼻の病気の原因となっていました。
つまり「漏水・内部結露」は、建物だけではなく、住む人の寿命も縮めてしまうのです。

では、漏水や結露などの問題箇所を可視化し、的確で迅速な調査ができる「高性能赤外線カメラ」による建物診断法をご紹介します。

3.「高性能赤外線カメラ」による漏水診断

赤外線カメラというものは、最初ドイツの軍事技術として研究開発され、軍事偵察や宇宙開発の用途に使われてきました。
このカメラによって建物を走査すると、内外の壁面の温度差が色によって正確に映し出されます。
例えば、屋上の床(写真1)を撮影した場合(写真2)、温度の低い部分が青く映ります。

写真1 屋上の床,写真2 高性能赤外線カメラ撮影による屋上の床

青く映った箇所は、防水層もしくはシンダーコンクリート下部に漏水し、さらに全体にわたって滞水しています。
この物件の場合、屋上から漏水が発生していました。最初は、熟練防水技能士による調査が行われましたが、 一般に目視中心の診断を実施するため、漏水箇所や現状を特定できませんでした。
そこで、「高性能赤外線カメラ」による調査診断を実施した結果、コンクリート下部の漏水状況を可視化し、すぐさま現状を把握できました。つまり、今までの勘に頼る方法では解明できなかった問題を明確にし、迅速で的確な補修工事を施すことが可能なのです。
また、壁や窓の断熱性や機密性の確認、外壁のタイルの浮きの確認、室内内部への結露水の確認など、広範囲に使用できます。

4.従来からある「赤外線カメラ」との違い

さて、この赤外線カメラによる診断手法は、日本では5年以上前から行われています。カメラの形状の多くは、ハンディカメラタイプ程度の大きさです。
しかし、従来から建物診断に使用されている赤外線カメラは、問題を多く抱えていました。

①画素数が低いため、画像密度が粗く、詳細な分析がしづらい。
②感度が低く、朝晩の気温の日較差がない場合は、赤外線画像に現れにくい。
③基本的には日中に日の当たっている箇所しか撮影できず、日陰となる箇所や屋内、夜間の撮影は難しい。

以上の様な理由から、調査しても画像から判断できない場合が、多々ありました。(写真3、4)

写真3 バルコニー,写真4 従来赤外線カメラ撮影によるバルコニー

従来の赤外線カメラで撮影可能と考えられる箇所は、気温の日較差があり、日のあたっている条件で、木造、ALC、もしくは、気象条件がよければ屋外のコンクリート壁などです。

一方、今回ご紹介する「高性能赤外線カメラ」は、ハンディタイプと比べると重いため、脚立などが必要となります。

しかし、以下のような高度な技術を持ち合わせています。

①従来の4倍の画素数を有するため、画像密度が細かく、詳細な分析ができる。
感度が高いため、時間、屋外・屋内などの場所を選ばず、撮影可能である。

そのため、従来の赤外線カメラが対応できなかった箇所へ精度の高い撮影が可能であり、漏水箇所を的確に特定できます。(写真5、6)

写真5 住宅の外壁,写真6 高性能赤外線カメラ撮影による住宅の外壁

5.今後の展開

この「高性能赤外線カメラ」による診断技術は、ハウスメーカーやデベロッパーのほか、ゼネコン、専門工事業者から高い技術評価を受けており、現在、「高性能赤外線カメラ建築物診断研究会(仮称)」の設立に向け、鋭意活動中です。
これらの活動にご興味がある方は、こちらまでご連絡ください。