アイゾールテクニカ

COLUMN

ポリマーセメント系防水材による新設橋梁床版上部防水工事

2016.12.02

大阪府千早赤阪村において、床版防水工として採用されたスプレダムS―1工法の事例を報告します。

はじめに

従来、建設業界はスクラップアンドビルドという考え方が主流であった。しかし近年、持続可能な開発という観点から、耐久性のある新設構造物を建設し、供用中は維持管理のシナリオを構築して、長期に渡って使いこなすという考え方にシフトしつつある。橋梁構造物においても同様である。各団体における実験・検証から、コンクリート床版の疲労耐久性の低下には雨水の浸入が大きく関わっているとされている。そのため、構造物の高耐久性を維持するために、新設の時点から床版上部に性能の高い防水工が必要であるとの認識に至っている。
そこで今回、床版防水工として採用されたスプレダムS―1工法の事例を報告させていただく。

工事概要

工事名称 一般国道(新)309号(仮称)かつらぎ橋上部工事
所在地 大阪府千早赤阪村
用途 橋梁床版上部防水工事
施主 大阪府
工期 2005年2月
施工面積 床版上部 687㎡
構造 プレスレストコンクリート造

工法の概要

本工法は、アクリルスチレン系プライマーを塗布後、EVA系エマルション(主剤)とセメント系粉体(混和材)を3:2で攪拌して得られる防水材を塗布するものである。鏝、ローラーおよび刷毛で塗布していく(図-1工法断面図参照)。

200511-01

工法選定の経緯

一般に床版防水の要求性能としては、防水性はもちろんであるが、ひび割れ追従性、床版コンクリートおよびアスファルト舗装との接着性があげられる。また、当該橋梁は河川を跨いで架設されているのに加え、冬季の施工であったために、天候や結露などにより下地が十分に乾燥しづらい状況であった。そのため、水分率が高い下地でも施工ができることと、膨れ防止のために透湿性も必要とされた。そこで、ポリマーセメント系塗膜防水材が候補に上がり、性能・耐久性・施工性などで比較検討され、この工法が採用された。

工事の特長・留意事項

当該現場は葛城山系の麓に位置しているため、天候が常に変動した。特に施工期間中には降雪もあり、その合間を縫っての工事となったが、多少の湿潤状況でも施工ができ、工期の遅れは無かった。これは、ポリマーセメント系防水材の最大の長所でもある(写真-1施工状況)。

また、下地との接着力向上と防水材のドライアウトを防止するために開発したプライマーにより、防水塗膜に膨れも発生せず、良好な状態を保っていた(写真-2施工完了後)。

また、防水施工後に舗装工を行った。アスファルト混合物の温度(150℃)による変化や、転圧時のフィニッシャーの通過・方向転換などによる防水層のよれは確認されなかった(写真-3舗装工の様子)。

留意事項としては、主剤と硬化材を混合する際に、硬化材がダマとして残らないよう5分以上十分に攪拌することが重要である。また、低温になると硬化に時間がかかるため、水性防水材の性質上、0℃を下回る状況での施工は避けることが望ましい。

200511-02

供用開始後の経過

200511-03

当該路線は一般車両と共に大型車も頻繁に通行する箇所である。また、橋梁近くには交差点があり、自動車の加速・減速が頻繁に行われるため、舗装と防水材にとって厳しい環境といえる。施工から半年を経過し、舗装部に変状もなく、良好な状態を維持している。今後もモニタリングを行い、耐久性を検証する予定である(写真-4供用開始後の様子)。

まとめ

一般にポリマーセメント系塗膜防水材は、防水性や耐久性に劣るというイメージがあり、簡易防水という概念が強く持たれている。しかし、当該工法を含めて十分な性能を有しているものがあり、適用部位の更なる拡大が期待できると考えられる。
また、建設資材と環境・生体への影響については、地球温暖化対策や無溶剤化への流れが大きな関心事となっている。防水材においても、性能はもちろんのこと、環境に負荷を与えないことが望まれる時代となった。環境対応型防水材に対する期待が強くなってきている昨今、ポリマーセメント系防水工法はメリットが多く、様々な場所で使用される可能性がある。
そのためにも時代の要請に応じつつ、高機能・高性能の製品開発を行っていく必要があると考える。

(田村悟士)